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漁船漁業の現状とイノヴェーション(セミナー) 

漁船漁業の現状とイノヴェーション
―漁業沈滞の中での、技術改革と経営革新ー

主催 (社)いわし食用化協会

日時:2013年1月30日(水)13:30~16:30
会場:(社)日本水産資源保護協会 会議室(東和明石ビル3F)

 【  プ  ロ  グ  ラ  ム  】

コーディネーター:(社)いわし食用化協会 専務理事 岡本 勝 氏

開  会
報 告 13:30~15:30 
第1報告  「東京湾の変遷と漁業経営」
(前)船橋市漁協 組合長 大野 一敏 氏
第2報告  「漁船漁業 何故こうなっているのか?」私の視点
(社)海洋水産システム協会 会長 藤田 純一 氏
休 憩
総合討論 15:40~16:30 参加者からの質疑など
閉  会


【趣旨】 
水産業を取り巻く漁場環境や経営環境の改善が必要ではないか?との観点から、漁業現場の第一線からの声と、各方面からの情報を含め総合的に熟考することが必要です。。
そこで「水産業の技術的観点からの改革」を考慮して、次の①、②の講演が行われました。

①江戸時代からの網元の長男として生まれ、東京湾でまき網漁業を永らく営み、東京湾の海の状況の変化や漁業資源の変化を把握した漁労技術と経営手腕により、東京湾内での漁業者の激減のなかにあって、マスコミも注目するベテラン漁師であり、環境問題や町おこし運動、魚食普及活動などに大活躍している(前)船橋市漁協 組合長の大野一敏氏に、東京湾での操業・漁業経営や各種活動などの実践からの提言等について、現場の最前線からの報告をしていただきました。
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<報告テーマ> 「東京湾の変遷と漁業経営」
<報告要旨> 
 まず、はじめに大野氏がまき網漁船で沖に出て操業している映像を紹介しました。このことで、東京湾で行われているまき網漁業のイメージを来場者皆で共有することができました。その後、講演に入り、戦後の海洋国家日本から工業立国に変わる中、江戸前の食文化を育む東京湾は臨海工業地帯に変貌したことや漁業も工業化の波の中で近代化が進み、船はグラスファイバー、網はナイロンそしてディゼルエンジンに変わっていることを説明しました。一方、漁場は埋立土地造成で縮小し、干潟は激減し、汚染は進行し、貧酸素水塊の出現が拡大して生物多様性が損なわれています。しかし、太平洋の小さな入江である東京湾は、首都圏の台所として重要な拠点であり、スズキの漁獲量は日本一、その他、サバ・イワシ・アジ等の回遊魚の餌場となっていることを「船橋市の漁業」パンフレット等を通じて紹介されました。
他方、バブル崩壊、市場のグローバル化、加工中心の消費構造は魚の相場を安値安定化させました。
こうした背景で、省力化や労働力の若返り化を図り、獲るだけでなく売ること(鮮度保持に努力)も必要と考えており、そのために漁船漁業の改革に取り組みたいが、行政の協力がなくては解決できない問題があるとの話もありました。
地域振興のためにイベントやフォーラムの開催、魚食普及活動等々思案の毎日を過ごしており、漁船でジャズコンサートなども定期的に開催しています。また、海上交通の実証試験も行いました。この様な中、2011・3・11 東日本大震災による原発事故の放射能による風評被害、そして、解決しない貧酸素水塊の問題に直面しています。放射能問題では、いち早く県、国の行政機関を回り、現場の視点から具体的な対策を提案されています。幸い問題となるような放射能はこれまで検出されていません。しかし、行政機関が一元化されていないため説明と行動に時間を要してしまうことや風評被害について誰も責任を取らない現状には疑問を呈しています。
アメリカは、国家としてワシントンD.C.チェサピーク湾の環境対策に取組んでいる(法整備等)事例を話し、東京湾の進まない環境対策の実情と異なるという話もありました。
しかし、漁業を守るために乗組員には、最低賃金補償を導入し生活の安定化と食糧自給を守っている自負を持って仕事のモチベーションを維持するよう努めていること等を紹介され、ポジティブな考え方を示されました。
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②農林水産省時代に漁船行政、海外漁業協力等を通じて我が国及び海外の漁業も含め豊富な情報を入手し、それらの工学的技術を我が国水産業に活用すべく貢献してきた(社)海洋水産システム協会 会長の藤田純一氏に、一昨年の東日本大震災による被災した漁船・造船所・流通施設など設備の更新に当たっての新たなる技術革新の活用やそれら技術と、一方、革新的な技術を取り入れた漁業経営の両面から漁船漁業の改革・改善とは何か? を報告していただきました。
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<報告テーマ> 「漁船漁業 何故こうなっているのか?」私の視点
<報告要旨> 
今後の漁船漁業の展望についての考えを示されました。漁船の建造隻数は、1980年前後までは、「全ての動力漁船」で年間2万隻前後が建造され、「20トン以上の漁船」で年間800隻前後でした。しかし、近年では「全ての動力漁船」で年間1000隻を大きく下回り、「20トン以上の漁船」では年間30隻前後の建造に止まっています。このことが漁船の老朽化問題、或いは代船建造問題として指摘されるようになって久しい。しかし、この建造隻数の激減が、どのような社会・経済的な要因を背景として進んできたかについて十分に議論されているとは言い難いと思われます。
 漁船の数、総トン数、漁獲量が長い間激減している現状において、漁業者が乱獲しているという話にすり替わることは、おかしいと指摘され、消費者物価と実勢相場との差額が50円もある(輸入品が極度に安い)状況で単純に漁業者を経営不器用と見なすことも間違っていると訴えました。
 造船業界が抱えている2014年問題についても触れ、日本の需要を喚起するためには為替の動きが重要であることを説明しました。漁業においては、船、設備、燃油等が高騰しているのに、販売の方はデフレにより下がっている矛盾を指摘し、共同化によって力をつけることで改善を試みるよう提案されました。

総合討論では、(社)いわし食用化協会 専務理事 岡本 勝 氏 が司会進行を務めました。
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大野氏、藤田氏の講演内容の解説の後、
魚食普及センター、ダイサン、東京海洋大学院、下関漁業、船橋みなと祭り実行委員会、海洋水産システム協会からコメントや質問が寄せられ、興味深い議論が交わされました。
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会場は満席であり、話題が尽きない中、定刻を過ぎたので、会場からの大きな拍手を以って閉会となりました。

報告者 (社)海洋水産システム協会 岡野 利之

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